もり内科クリニック
漢方専門外来

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良薬は口に苦し」から「良薬は口に旨し」へ

漢方治療では漢方薬を服用することが必然です。今まで漢方薬の服用に際し、「良薬は口に苦し」ということが、格言として当然のごとくいわれてきました。しかし、当院では漢 方薬を選ぶ時、試飲を取り入れ、その結果「良薬は口に苦し」という格言が、多くの場合で当てはまらず、反って「良薬は口に旨し」の患者さんが ほとんどです。そこで、「良薬は口に苦し」から「良薬は口に旨し」に変えることを提唱しています。

漢方治療における、試飲の有効性・有用性・利便性


当院では漢方治療に際し、漢方薬を選ぶ一つの手段として、試飲を行っています。全ての患者さんに、初診 時または薬方変更時に、試飲を行いその有効性・有用性を見出してきました。漢方薬の匂い・味・服用後の反応などで判定しています。漢方治療に 当たって、有効な薬方を早く見出し、患者さんの苦痛を軽減することは最も大切であり、試飲はとても有用な手段です。
勿論、時に「良薬は口に苦し」という場合がありますが、試飲の時点で、飲みにくい場合であっても、漢方薬が必要な時に服用すると、飲みやすく なって、症状が改善するなど、良い結果になる場合が多いです。一方、体に合わない薬は、不味(まず)く感じることが多く、漢方治療経過中、そ れまで有効で美味しかった漢方薬が、「不味くなった」、「飲みにくくなった」、「飲みたくなくなった」時は、症状も変わり、漢方薬を変える時 で、そのタイミングを見逃さず、どの漢方薬に変えるか、中止するかを見極める必要があります。 
当院では保険診療を行っていますが、使用する漢方薬は、エキス剤が中心です。漢方エキス剤は煎じ薬のように手間がかからず、用いるのに便利 で、試飲に適しています。当院では、患者さんの症状によって、適切な薬方を選び、さらに、漢方薬エキス剤の有用性を高めるため、生薬末の加味 を行うなど臨機応変の治療を行っています。今まで、『煎じ薬が中心であった時代=手間が係り、高額』から、『保険診療で薬価も低く、利便性の 良い漢方エキス剤が提供されている』現状は、漢方治療にとってありがたいことです。当院では丁寧な漢方的診断に基づいて、漢方エキス単方、複 数エキス剤の合方、生薬末の加味などで、有効且つ有用な薬方を見出しています。特に、試飲の判定基準の一つに、「良薬は口に旨し」を重点に置 いています。 

まとめ

我々人類には、嗅覚・視覚・味覚・聴覚・触覚の五感があります。中でも嗅覚と味覚は最も原始的な感覚 で、生物の生存にとって重要な感覚です。漢方薬を味や匂いによって選択する試飲は、大切な方法です。漢方薬が味のみならず、匂いも重要な要素 であることは、薬物の匂いよって体調を整える、アロマテラピーなどで判ると思います。さらに、「百薬の長」といわれる酒を飲む時、その味や香 りによって酒を選び、同時に自分の健康状態をチェックしているのです。
最近テレビのコマーシャルで、某製薬会社が宣伝のため、口当たりの良いゼリーを漢方薬に混ぜ、「良薬は口に苦し」の漢方薬を、「良薬は口に旨 し」に変えるいう宣伝を行っています。しかし、この宣伝では、そもそも漢方薬は「良薬は口に苦し」ということを前提にしていますが、本来、漢 方薬は「良薬は口に旨し」ということを前提にしなければなりません。そこが全く間違っていることを強調しておきます。
以上述べてきたように、漢方薬は「良薬は口に苦し」ではなく、「良薬は口に旨し」で、「不味い薬」は効かないということをご理解下さい。

もり漢方内科クリニック  院長 盛 克己