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感染性胃腸炎(嘔吐下痢症)(2012年改定:第3版)
INFECTIOUS GASTROENTERITIS

原因:主としてノロウイルス・ロタウイルス



ウイルスの感染について

感染性胃腸炎の原因ウイルスのうち、ノロウイルスは主に海の牡蛎などの二枚貝に生存し、ロタウイルスは主に動物の腸の中に生存しています。こ れらのウイルスが付着した食べ物などから感染します。ウイルスは、口・胃・小腸・大腸などの消化管の粘膜細胞で増殖します。一般の風邪のウイ ルスや、細菌は胃酸で死滅しますが、ノロ・ロタは胃酸で死滅することなくかえって胃粘膜でも増殖します。さらに、ノロ・ロタは増殖力が強く、 10匹前後の少ない数でも病気になることが有ります。感染しても、免疫力の強い人は病気になりません。増殖したウイルスは嘔吐や下痢などによ り排出されます。勿論、ウイルスは嘔吐物や大便には多く含まれていますが、一部は飛まつとなって空気中を飛び回り、感染を繰り返します。ノ ロ・ロタのウイルスが発見される前は、感冒性胃腸炎といわれたように、感染性胃腸炎は「風邪=かぜ」の一種でありました。ただ、ノロ・ロタは 感染力は強いのですが、病原性は低いので(漢方医学では、「中風=ちゅうふう=命にかかわらない病気」に分類)、重症化した場合の対処法をわ きまえていれば(点滴など)、命にかかわることはありません。尚、現在の西洋薬には有効な薬は有りませんが、漢方医学では、すでに約2000 年前に『傷寒論』という本の中に、「かく乱病=急性嘔吐・下痢症」が書かれていて、その対処法(刻々と変化する症状と、対応する漢方薬)が示 されています。当院では、症状に応じた漢方薬を処方し、できるだけ早く健康な状態に回復するよう対処しています。

同じような嘔吐・下痢症の病気である「コレラ」「0-157」など、細菌性で毒性の強い場合(漢方医学では「傷寒=しょうかん=命にかかわる 病気」に分類)は、命にかかわりますので、ウイルス性の感染性胃腸炎とは区別して対処しなければなりません。現在は、救急医学による、隔離な どの処置が必要となっていますので、漢方医学での治療は行いません。


症状と経過

ウイルスの進行に伴って、頭痛・鼻水・のどのイガイガ(上気道)⇒吐き気・嘔吐・胃痛(胃)⇒腹痛・腹満・下痢(小腸・大腸)と進行します。 嘔吐や下痢がひどく、脱水状態になってぐったりした場合は点滴治療が必要です。しかし、嘔吐や下痢によってウイルスが身体から排出されれば、 症状は速やかに改善しますので、普段健康な人は全く心配ありません。嘔吐や下痢はウイルスを身体の外に出すための症状ですから、吐き気止めや 下痢止め薬は使用しないことです。

治療と 手当

ノロ・ロタに効く西洋薬はありません。免疫力を高め症状を緩和する漢方薬が最も有効です。ただし、ウイルスの増殖力、消化管での進行状況、病 人の症状や免疫力などに対応した漢方薬が必要です。「感染性胃腸炎にはこの漢方薬」というような決まった処方はありません。

前述したように、嘔吐や下痢は、ウイルスを速やかに体外に排出する身体の反応ですから、止めてはいけません。嘔吐や下痢を止めるとウイルスは 喜んで体の中で増殖します。0ー157が流行したときに、下痢止めを飲んだ患者から多くの死者が出たことを見ても、特に下痢止めは百害あって 一利なしと考えます。

嘔吐や下痢があっても水分補給は大切です。スポーツドリンク・スープ・味噌汁など、本人が飲めるもので補給しましょう。特に、脱水になってく ると脳の活力や免疫力が低下します。脳を速やかに活性化するには「ブドウ糖」が必要ですので、スポーツドリンクなどに「ブドウ糖」(薬局や自 然食品売り場にあります)を加えると有効性が高くなります。嘔吐や下痢がひどく、脱水状態になったら救急病院で点滴治療を受けてください。

もともとノロ・ロタは太古の昔から存在し、人類とともに生きてきたウイルスです。最近電子顕微鏡により発見されただけで、大騒ぎするほどでは ありません。嘔吐・下痢症は、以前なら「寝冷えした」、「冷たいものを食べた」などの病気です。ウイルスは空気感染も多いので、ノロ・ロタの 流行期間中は、手洗い(必要ですが)などで防ぐことはできません。ただし、ノロ・ロタに感染した人と、「閉鎖空間=狭い部屋」での「濃厚接 触」は避けましょう。

以上のように、感染性胃腸炎の原因と対策を十分学習し、適切に対処しましょう。マスコミなどの風評に惑わされないことが大切です。

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