インフルエンザへの対処
TREATMENT FOR FLU
インフルエンザ(以下インフル)はインフルウイルスの感染によって起きる「風邪」の一種です。ただし、インフルウイルスに感染してもすべての
人が発病するわけではありません。インフルウィルスに対する免疫力の無い、または少ない子供が多く発症し、60才を過ぎると1~2%以下にな
ります。すなわち、インフルにかかる人(インフル人間)は、人口の20~30%に過ぎず、高齢になるにつれてその割合は低下するのです。イン
フル人間のみが予防接種対象者となるのです。それ以外は「ノンインフル人間」ですから、インフルを恐れる必要はありません。ただし、大量のイ
ンフルウィルスに接触したり(「閉鎖空間」「濃厚接触」など)、極端に免疫力が低下した時はかかる恐れがありますので注意が必要です。
インフルは、A型・B型・C型がありますが、流行するのはAとBです。中でもA型は感染力・増殖力が強い悪性のウイルスです。免疫の低下した
人などに感染すると、肺炎などを併発し、毎年50人~1200人ほどが亡くなります(表1)。(尚、肺炎の死亡者は年間10万人弱いますで、
インフルの死亡者は、マスコミなどの宣伝ほど多くはありません)。また、乳幼児では毎年50~200人以上が「インフルエンザ脳症」(PL・
ポンタールなどの解熱剤の使用が制限されてから減少)を発症し、半数程度の子供が死亡または重度の障害を残して苦しんでいます。この「インフ
ル脳症」についても、早期の副腎皮質ホルモン(ステロイド)による治療の有効性が高いという見解が発表され、今後の治療に役立っていくと思い
ますが、何より「インフルの治療に解熱剤を一切使用しない」ということで予防するほうがもっと大切です。
さらに、04~05年度のシーズンは、B型インフルの大流行という、誰もが考えても見なかった事態が発生し、今までのインフルに対する常識を
打ち砕く結果となりました。このシーズンのB型インフルは、1)A型インフルの2倍の発症、2)今まで見られなかった症状の重さ(重症例・死
亡例の多発)、3)病気期間の長さ、4)タミフル無効例の多発などの特徴を示しました。私はタミフル大量消費をその原因の一つと考えていま
す。マスコミなどはタミフルの登場により、インフルも「怖い病気」ではなくなりつつあるかに宣伝されましたが、「タミフル+西洋薬」の治療で
は、宣伝されている程の有効性はなく、逆に10代を中心に多くの人々が異常行動なので死亡する事態(ほとんどの患者が解熱剤や抗菌剤を併用)
となっています。また、タミフル耐性ウィルスがB型を始め、A型にまで広がり、タミフルの有効性が減少しています。2005年は当院で行った
「タミフル+漢方薬」による治療で、始めてインフルに対するはっきりとした有効性が確認できたのです(表6)。タミフル耐性ウィルスの出現に
より、今後は「リレンザ+漢方薬」で対処しますが、いずれリレンザ耐性ウィルスが出現してきますので、基本は漢方薬を当院で行ってきた「増
量」「頻回」投与が主流になります。
今後も、マスコミなどの情報や風評に惑わされることなく、インフルに対する正しい知識を身に付け、的確に対処し自分たちの命を守りましょう。
今回も「日本臨床内科医会」から発表された、00~01年度から07~08年度まで、7年間のワクチン非接種・接種群の比較した表を提示しま
す(表2、表3)。08~09年は中流行年となることが考えられます。
まとめ
1:インフルエンザは「インフル人間」のみがかかる疾患です。自分または家族の誰がインフル人間かを把握し、正しい対処方を考えましょう。
2:ただし、インフルウィルスは空気感染しますので、ノンインフル人間であってもインフル患者とは「閉
鎖空間」「濃厚接触」は避けましょう。
3:すでにタミフル耐性ウィルスが登場していますので、今後は「漢方薬+リレンザ」、または漢方薬の増
量・頻回投与」で対処します。